ある鉄塊のために

先日、ふとしたことで、ある大学で、ドキュメンタリー映像の上映会に参加させていただきました。新聞各紙での告知もあり、ホールの中は盛況で、マスコミ各社の姿もちらほら。関係者席には大学OBのお偉方も。

さて、映像の方はどんなものであったかと申しますと、戦前、その大学には、原子核/素粒子の実験に用いられる加速器の一種である、サイクロトロンと呼ばれる装置がありました。で、そのサイクロトロンは戦後、原爆開発との関わりを理由にGHQによって解体、廃棄されてしまうわけですが、何故か、その装置の部品がその大学に保管されていたということから、ストーリーは始まります。

この映像では、科学史科学技術社会論、技術史といった観点から、この部品がクローズアップされ、多くの関係者の証言を通じて、部品からサイクロトロンという装置そのものや、それを取り巻く当時の状況といったものが描き出されていきます。装置そのものは、原爆の開発とは直接関わっていないとは言え、それらの科学技術の具体化したもののの頂点に原爆が位置づけられること、研究の援助を軍から得ていた事実もあるわけで、戦争と科学という微妙な問題にも触れる内容でもありました。幅広い内容を、独自の視点を交えて、うまくまとめていたように思います。また、ここでのストーリー自体が、この部品をこれから残していく理由になっている点も、この映像の優れたところでしょう。


ただ、この映像にではなく、映像を受け取ったフロア側に問題がありました。そして、それは製作者に対する礼を欠くものであったように思えます。